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6割のフィクションと2割の嘘1割の真実で構成されております。

雨は降っているのか

小雨が降っているか判断する方法が二つある。

一つは水溜まりに波紋が出ているか。
二つは道行く人が傘をさしているか。

 

窓から外を見る。

水溜まりには波紋が無いように見えるがいささか遠い。
ちょうど通り掛かった老夫婦が傘をさしていたので
玄関で傘を手に取りコンビニに向かう。

 

なぜ老夫婦と分かったのか。
見た目が老人だったからと、男女で歩いていたからだ。

偏見ではないのか。
見た目より若いかもしれないし、夫婦とは断言できない。

訂正しよう。
ちょうど通り掛かった二人が傘をさしていた。

これでは風情が無い。

 

なんとかコンビニについた。
お昼に何を食べるかを決めなければいけない。
手軽にカップ麺か、気分で言えば焼肉弁当の類だが、

ダイエット中なのでヘルシーな物にするべきか。
しばらく悩んで気が付いた。

 

傘を使ってない。

雨は降っていなかったのだ。


何とも言えない気分になって、カップ麺でいいかと会計を済ませる。

二人が傘をさしていたから降っているものだと思い込んでいた。

確かに水溜まりには波紋が無かったように見えた。

距離があったとは言え自分を信じれば良かった。
判断を他人に任せてしまった。私はいつもそうだ。

自分に自信がないのか他人の方を信じる傾向にある。

その方が楽なのだろう。

 

そんなことを考えながら店をでる。

 

気持ちを汲んでか小雨が降っている。
傘をさして、家へ向かう。

 

傘使ってんじゃねぇか

 

こんなことなら焼肉弁当にすればよかった。
ダイエット中で夜は制限がある。お昼しか自由に食べられないのだ。

 

自分で決めたカップ麺の方が間違いだった。

大切なのは信じる対象ではなく、後悔のない決断と信じるに値する過程なのかもしれない。

そう思った。