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6割のフィクションと2割の嘘1割の真実で構成されております。

リモコン失踪事件

目覚ましの五分前に目が覚めた。

カーテンを閉め切った部屋には朝日は入ってこない。

枕元のリモコンに手を伸ばす。手のひらは空をつかむ。

そうだった。先週から電気のリモコンが無いのだった。

 

最初に気が付いたのは真夜中だった。部屋で物音がして目が覚めた。

なにかと思い電気を点けようとしたが、リモコンが見当たらない。

仕方なくベットから起き、ドア横のスイッチを押しに行く。

明るくなった部屋で物音の原因を探すがこちらも見当たらない。

探すのも面倒で、この日はそのまま寝てしまった。

 

それから三日ほど我が家のリモコンは失踪している。

もちろん目ぼしいところは捜索済みだ。

ベットの下、机の上、棚の中、

先週末に来客があったので片付けしたがその際にどこかに紛れてしまったのだろう。

懸命な捜索も虚しく発見には至らなった。

 

そして今日、寝起きで詰まった鼻をかみながらリモコンの行きそうなところを考えている。

ゴミ箱に鼻紙を捨て、とりあえず部屋の電気を点けようと立ち上がった時に思い出した。

 

今日は燃えるごみの日だ。

今週末も来客があるため今日出しておかないと色々と困る。

忘れぬうちにやっておこうと、部屋のごみ箱からごみを集め始める。

一纏めにしてゴミ捨て場に出す。

 

それにしてもリモコンはどこに行ったのだろう。失踪した当日はいつも通りだった。

枕元にリモコンを置き、そのまま就寝したはずなのだ。

その後音もなく消え去ってしまった。私の真横にあったのに。

 

本当に音も無かったのだろうか。

私はあの日、物音で目が覚めている。

ベッドの脇にはごみ箱がある。

そこは捨てる場所であってしまう場所ではない。

わざわざ探すことはしない。

 

私は慌ててゴミ捨て場に向かいゴミ袋を漁った。

 

あった!リモコンだ!!

 

間一髪であったが無事、事件は解決した。